某店バイト時代に書いてたレヴューとかをこっそり公開。

一部の、いま手元にデータがあるもの。自分で書きたくて書いたものより「これを書け」と言われて書いたものの方が多め。日付は発売日ではなくおおまかな執筆日。とにかく大げさな表現多し。2014年分まで更新不定期でちまちま追記していきます。記録用。某所から怒られたら消します。

他のサイトで読めるものにはリンクだけ貼っておきます。読みに行くのは面倒ですが、企画モノの推薦盤など、わざわざ寄稿したりした=特に推していた作品の場合が多いです。

2006年頃のものは「ポップ」用に書いたものがほとんどで、レーベルやメンバーなどが載っていないことが多いですが、いちいち調べて貼ったりはしません。後の方になってくるとそのへんの情報も増えてくるはずです。

たまにあからさまな無知や不見識からくる記述やいま読むと赤面モノのひどくズレた戯れ言が書いてあったりしますが、修正なしでそのまま公開してます(もし修正した場合はその旨を記載)。当然ながら(?)、信頼度は今に近づけば近づくほど多少は上がります。まあ、参考程度に。

FROY AAGRE 『KATALYZE』 2009/2/27

ノルウェーの女性サックス奏者FROY AAGREのバンド「OFFBEAT」を覚えていますでしょうか。確かな音色と表現力、センスを示したデビュー盤は、当時無名の存在ながらこのお茶の水ジャズ館を中心にちょっとしたヒットを記録しました。今作はその「OFFBEAT」待望の第二弾です。雄大さ、おおらかさを感じさせた前作の質感はそのまま、時に神秘的に時にアグレッシブに、より表現の幅を広げています。この奏者の魅力はまず、素朴だけれど骨太で芯の強さを感じさせる音色にあるのではないでしょうか。とてもオーソドックスで「まさしくテナー」「いかにもソプラノ」な音色ゆえ、パッと聴き地味な印象を受けるかもしれません。しかしこれほどまでに「実が詰まった」演奏が出来る奏者はなかなかいないのではないでしょうか。朗々と歌うテナーが好きな方や、欧州系ピアノ・トリオのサウンドが好きな方、そしてもちろん北欧系コンテンポラリー・ジャズが好きな方など、様々な方にお薦めしたい作品です(「とにかくテンションがあがる」とか「鋭い」作品をお求めの方には向かないかもしれませんが)。この2月には来日公演も果たすなど、ますます精力的になる活動に注目です。

CORDES SENSIBLES 『Constellation』 2009/2/9

「SPEAK NO EVIL」「NAIMA」「NICA’S DREAM」といったお馴染みのジャズメン・オリジナル、「ZINGARO」らA.C.ジョビンの曲などを勝手気ままに(?)料理するフランスの女性ヴォーカル・デュオ、CORDES SENSIBLES。原曲の雰囲気を壊さず、繊細に(センシブルに)アレンジされた楽曲の妙も見事なのですが、この人たちのなんともフレンチ・ポップスっぽい(?)スキャット・コーラス、なんだかふざけているみたいで、なんか変で、聴いていて妙に面白いです。絶妙のお洒落さと、絶妙の(?)胡散臭さ。「美しい」し「神聖」だし「かっこいい」し、「おかしい」。小西康陽さんがパリの店内で「一目惚れ」した、というエピソードにも頷ける、とにかくちょっと他にはない、妙に耳にひっかかる、音楽であります。単純な「お洒落さ」や「いいムード」などだけを求める人には、その「ひっかかり」が邪魔になるかもしれませんが、そこのところこそを楽しめる方に、ぜひ。いや、実際、普通にすごくかっこいいんですけどね。

GABRIEL AMARGANT 『First Station』 2009/2/1

FSNTというとだいぶとんがった作風をイメージされる方も多いと思われますが、こちらコンテンポラリーな雰囲気はフレーヴァー程度。正統派ハード・バップ・ファンやモダン・テナー・ファンの耳に訴え、なおかつ現代的な肌触りもしっかり感じさせる秀作であります。うまいこと自然に「いいとこどり」できている、ということでしょうか。それにしてもこのガブリエル、1986年生まれで録音当時21歳というから驚き。まずはいかにもテナーらしい音色が魅力の彼、地元スペインではすでに大人気とのことで、今後は頻繁に名前を聞くことになるかもしれませんね。

THE CORE 『GOLONKA LOVE』 2009/1/6

http://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ081217-13

新旧2人の鬼才・異才フロントマンの壮絶な演奏が思う存分楽しめる、3公演から構成された2枚組ライヴ盤です。ディストーションかましたローズの上でJorgen Mathisen(主にas)が暴れまわる現行のThe Core(Disc.1の途中まで)もむちゃくちゃかっこいいし、Kjetil Moesterがテナーやソプラノを吹き散らかすDisc.2(+2曲)も凄い。私はKjetilの豪快なテナーが大好きで日々愛聴しているのですが、「豪放磊落」という言葉がここまで似合う奏者もなかなかいないのではないでしょうか。現代においては稀になってしまった(?)「不良」の匂いをぷんぷん撒き散らす魅惑的なジャズメンであります。驚くべき進化/深化を見せるTHE CORE本体も含め、ぜひともご注目くださいませ。

Jørgen Mathisen(sax:CD1 M1-5), Kjetil Moster(sax:CD1 M6-7,CD2), Erlend Slettevold(p), Steinar Raknes(b), Espen Aalberg(ds), DJ Lenar(turntables:CD2 M5-8)

ROLAND KIRK 『LIVE IN '63 & '67』 2008/11/2

本作は63年の欧州ツアーからベルギー、オランダでのライブをそれぞれ5曲と4曲、67年ノルウェーでのライブから5曲、計14曲から構成されているのですが、とにもかくにも観ていただきたいのが前半63年の2公演。近年では自身のビッグバンドでも大人気を集めているジョルジュ・グランツ(p)、欧州ジャズの重鎮としてその名を轟かせるダニエル・ユメール(ds)、そのユメールとも多数のコンビを組んだ第一級の実力者ガイ・ペデルセン(b)。若々しい風貌をした彼等のスタイリッシュかつエネルギッシュプレイは、本作品の価値を限りなく高めています。特に目を惹くのがユメール。カークのホーンから溢れ出すフレーズに対し懸命に喰らいつきそのそれぞれに律儀なまで丁寧に反応していく様は、観ていて実に楽しい! 抜群のセンスとテクニックを持つ彼のこと、そのある種「古め」とも言えるアプローチもむちゃくちゃかっこよく、かつ「新鮮」な感覚すら与えてくれます(キャリアを通して、カークのプレイに細かく反応する共演者はほとんどいない、というせいもあるでしょう)。その名の通り3本のサックスを同時に駆使する「Three For The Festival」では手元を大写しにするなど、映像としての面白さとカークの奏法に対する興味を同時に満たしてくれるカメラワークも素晴らしいです。また嬉しいのが63年10月のオランダ公演4曲。観客が周りを取り囲むような形のあまり大きくない店の中で、聴客たちの様子が頻繁に映るのですが、そのカークの音楽を心から楽み喜んでいる様が、実に趣き深いのです。時代を超えて同じ音楽を楽しむ、我々とはいわば「同士」の彼等に対し、いつの間にか親近感を超えて愛情のようなものを抱いている自分に驚かされます。この作品を観ながら改めて考えたことなのですが、「カークは映像付きの方がわかりやすい」のではないか、と思うのです。無論、音自体が最高なのですが、映像を目にしながら聴くことによってその音の素晴らしさに改めて気付かされる、風貌や一挙手一投足を含め、その存在自体が音楽と一体になっているような、そんな存在がカークなのだと思うのです。そういう意味で本作は、ファンなら必携なのは当然だとして、カーク入門者や1、2枚聴いたことはあるけれど大ファンになるまでには至らなかったような人にも、強く強くオススメしたい作品です。他にも名演が残っている「Yesterdays」での意表をつく変な展開、朗々と謳いあげるマンゼロ、「Bags’ Groove」におけるドラムとのチェイス、「Lover Man」のイントロでおもむろに取り出す携帯オルゴール(?)、その他、見どころ、名シーンばかり。とりあえず何をおいても観ていただきたい作品です!

この作品を観ながら改めて考えたことなのですが、「カークは映像付きの方がわかりやすい」のではないか、と思うのです。無論、サウンド自体が最高なのですが、映像を目にしながら聴くことによってその音の素晴らしさに改めて気付かされる、風貌や一挙手一投足を含め、その存在自体が音楽と一体になっているような、そんな存在がカークなのだと思うのです。そういう意味で本作は、ファンなら必携なのは当然だとして、カーク入門者や1、2枚聴いたことはあるけれど大ファンになるまでには至らなかったような人にも、強く強くお薦めしたい作品です。他にも名演が残っている「Yesterdays」での意表をつく変な展開、朗々と謳いあげるマンゼロ、「Bags’ Groove」におけるドラムとのチェイス、「Lover Man」のイントロでおもむろに取り出す携帯オルゴール(?)、その他、見どころ、名シーンばかり。驚くほどの綺麗な映像に音質も文句なし。カークの魅力に悶絶できます。

JAZZ ICONS / DVD

RAHSAAN ROLAND KIRK(ts,stritch,manzello,clarinet,castanets,vocals,various flutes,whistles), GEORGE GRANTZ (p), GUY PEDERSEN (b), DANIEL HUMAIR (ds),RON BURTON(p), NIELS HENNING ORSTED PEDELSEN (b),ALEX RIEL(ds)